なきり

日記

弁慶 屍エンド

弁慶9章分岐バッドエンディング、あった~!!

 

オタクの妄言じゃなくて良かったね

 

なんでエロゲーじゃない? スチル寄こせ

 

正直兄弟のことBLだと思っているので(は?)(自我を出すな)

穴兄弟エンド最高やね 感謝感謝

 

以下、中途エンドの存在を知る前の妄言

 

 

「義姉上!」

――春。邸の桜をぼんやりと眺める義経を呼ぶ声があった。

「義姉上、こんなところにいたんだね。部屋から出たらだめじゃないか」

榛色の髪の男は、そう義経咎める一方で、口調には年長の者――あくまで立場上、ではあるが――への甘えが多分に含まれた柔らかな響きがあった。天下を支配する名門の将らしく見目は立派だけれど、彼の兄や義経に対しては驚くほど無邪気な姿を見せる。

「桜が見たくてな」

春風が義経の肌を撫で、薄く色づいた花弁が舞い落ちるのをつかまえる。

「美しいだろう」

「まあ、そうだね」

隣に座り込んだ男は、さして風流に興味はないといった様子で相槌を打つ。

「そんなに好きなら、義姉上の部屋の前に移してあげるよ」

「可哀想なことを言うな。人の都合で自然を恣にしてよいものか」

ふうん、と先刻と同じ相槌に、どこか嘲笑じみた軽薄さが加わる。

「そうは言うけど、この木だって元はどこぞの山だか邸にあったものだよ? 苗木から育ったわけないでしょ」

――そうだ。満ち満ちて育ち義経の目を楽しませるこの桜と、まだ生木の匂いさえするこの邸が同じ時を過ごしているはずもない。そんな当たり前の事を突き付けられて、どうしてか義経の胸は締め付けられるように痛んだ。

何処ぞで生まれ、育ち、人の欲望にとって居所を移される哀れな大木。この邸ではなく元居た場所――山寺にでも生えていれば、多くの人の目を楽しませたであろう美しい姿。こんな、人のいない広いばかりの邸ではなく。

「義姉上! …聞いてる?」

男が、物思いに沈み始めていた義経の肩を揺らす。怪訝そうな顔つきの裏に、退屈を嫌う子供じみた感情が見て取れた。構ってもらえなくてつまらない――義経は義弟の、こういういじらしい所が好きだった。

「…なに。甘やかしたい気分なの」

「ふふ…そうだな」

ふわふわとした柔らかな髪を撫でる。細くて柔らかい髪は猫のようで、気分屋な彼にぴったりだといつも思う。

しばらく撫でられていた男は、小柄な義経に合わせて首を傾けるのに疲れたらしい。

「義姉上の膝は柔らかいねえ」

見上げるほど高い位置にあるはずの顔が、義経の眼下にある。しばらくぶりの重みだ。

すり、と膝や腹に頭を押し付けられて、よしよしと頭を撫でてやると、微睡むような声がする。疲れていたのだろう。彼と会うのは本当に久しぶりだった。

「…ねえ、義姉上。やっぱり桜は移してあげるよ。出歩くと体に障るでしょう」

「病人ではないのだから平気だ。気遣いは嬉しいが、お前たちは心配性が過ぎるぞ」

「過ぎて悪いってことはないでしょ――身重なんだから」

男は愛おしそうに義経の膨らみ始めた腹に顔を埋めた。くすぐったい。

「男か女か、どちらだろうね」

「おまえはどちらが良い?」

「どちらでもいいさ。なんてったって俺たちの――兄上と義姉上の子供なんだからさ。ああ…強く美しい子が産まれるのだろうね」

先の冬、父親になったばかりだという義弟は、我が子以上に愛おしいといった様子を隠そうともしない。顔も知らぬ奥方に申し訳ないような心地がするが、暇を見つけてはこの邸へ足繁く通う姿は新婚とはまるで思えず、本当のところは義経も知らない。彼も夫もそういった話はしないし、義経は夫に嫁いでからこれまで、碌に邸を出たことが無かった。それに、

(…本当に、重衡の子かもしれないしな)

どうあれ産まれてくるのは彼らそっくりの子に違いない。

榛色の髪、青みがかった瞳。列挙すれば、彼とはまったく違うのだと気付く。そう、赤い髪の――

(……?)

誰だったろう。

時折、名も知らぬ誰かが義経の名を呼んでいる気がして、それがとても、とても快いものであるような気がしてならない。暗闇に塗りつぶされた相貌は獏として、義経には掴みようもなかった。

「義姉上」

呼ぶ声に、思考が散じる。

夫そっくりの美貌が笑みを湛え、節くれだった指が義経の体じゅう其処彼処へ絡みつく。たちまち脱力する体は、浅ましくも男の体を覚えていたらしい。

腹を撫で、膨らんだ乳房の輪郭を辿る。二の腕はやわらかく男の指を沈み込ませる。

まるで女のようだ――そう自嘲し、いや女でなかった時などない、と己の思考に内心首を傾げる。

近頃、そんな思考にばかり陥る。まるで義経の内に、もう一人の己がいるような。

ここ暫く、夫らと過ごす時間が減ったからだろうか。妊娠中の女は不安症に駆られるものだと何処かで聞いた。

「長く家を空けてごめんね、義姉上。やっと戦が終わったから、兄上にもこれからは毎日会えるよ」

「戦…?」

「源氏の奴らがついにくたばったのさ。頼朝も、子らも、家臣連中も」

白皙の美貌を紅潮させ、唇は笑みを形どる。

「義姉上にも見せたかったなあ。鎌倉が燃える様をさあ…!」

「…そうか」

戦は好きではない。武家だけの諍いに収まらず、民草ばかりが割を食う。そう落ち込んだ気分も、身を起こし首筋に顔を埋める男の気配にすぐに霧散する。日も高い庭先で、はしたないとはとうに思わなくなった。どうせ誰もいないのだ。

久しく会えていなかった夫が帰ってくる。傍らには義弟も居て、腹にはまだ見えぬ我が子もある。

かつて望んだ穏やかで幸福な生に、泣きたいほどの心地がした。

 

 

 

洗脳モノっていいよね